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keizo

「こんなところで

「こんなところで、グズグズしていると、面倒な事になる。行くぞ。」と言って足早に歩き始めた。 ロキは弾かれたように、ハンベエの後を追った。「ハンベエ、『キチン亭』はこっちだよ。」「おっと、そうか。俺は『キチン亭』の場所は知らないんだった。」「ハンベエ、あんなに人を殺しちゃって、大丈夫かなあ?」 ロキが小声で言った。ハンベエの阿修羅の如き働きに少々ビビったみたいだ。

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「大丈夫だ。俺の基準では、夜中に被り物をして人を襲うような奴は、問答無用でぶった斬っていい事になっている。」「俺の基準って・・・まあ、仕方ないか。ハンベエ頼りにしてるよ。」「ところで、手紙の件だが、基金平台いておこうか。宿に着いたら、詳しく教えてもらおう。」「興味無かったんじゃないの?」「興味はないが、敵が出てきた以上、対処しなければならない。情報が必要だ。」「敵って、さっきの連中?、やっぱり、手紙に関わりあるのかな?」「奴らの狙いはロキだった。手紙の件以外に心当たりがあるのか?」「・・・今のところ無いみたい。」(さて、六人。ロキについて行けば、この先も斬る相手には不自由しなさそうだ。先ずは十人。それから先は、また、その時に考えよう。) ハンベエは、前途に多数の敵が出現して来るような予感を抱きながら、反(かえ)って意気昂揚してくる自分を感じていた。剣術使いであるハンベエにとって、やる事は一つ、ただ斬るのみである。この戦乱の世に生まれ、孤剣を抱いて他に何をする?・・・狂える船は嵐を請うなり、哀れ嵐にやすらいありとかよ(byレールモントフ『白帆』) やがて二人はキチン亭に到着した。ロキはキチン亭では、『顔』らしく、2階の上等の部屋を取る事ができた。代金は銀貨一枚である。金貨一枚を出すと、お釣りに銀貨19枚が帰ってきた。ハンベエに釣りを渡そうとするロキに、ハンベエは一言『おまえが持っていろ。』と言った。 部屋に入ると、すぐ食事が出てきた。雉のあぶり肉に、シチューにパン、酒は付いていたが、ロキもハンベエも飲まない。代わりにお茶を頼んだ。結構豪華な夕食である。 この地方では、パンが主食である。南方では米が取れるのだが、ゴロデリア帝国は雨量に乏しく、米の栽培には適さない土地柄だった。「久しぶりに、食事らしい食事にありつけたよ。」 ロキは美味しそうに食べる。とても幸せそうな表情だ。「ハンベエは、いつもは何食べてるの?、やっぱりパンとスープが主体?」 ロキはパンをちぎってシチューをすくいながらハンベエに尋ねた。「いや、パンを食べるのは10年ぶりかな。山の中にいたからな。鹿や豬、熊とか、肉ばかり食べてたな。他人の食い物に興味があるのか?」「うん、だってハンベエメチャクチャ強いでしょ。何食べたら、そんなに強くなるのかなあ、と」「俺が強いとしたら、食い物ではなく、俺の師匠のお陰だよ。」「ハンベエの師匠って誰?」「フデンという人だ。」「フデン・・・どこかで聞いた事があるなあ。・・・そうだ。フデンっていったら、伝説の武将じゃないか。ワクランバの戦いでは、一人で千人も斬ったと言われてる・・・でも、30年も昔の話だよ。まだ生きてるの?、同じ人かなあ?、でも、ハンベエが伝説の武将フデンの弟子だったら、ハンベエが強いのも当然だね。」ロキの言葉にハンベエは驚いた。フデンは自分の前半生の話は全くハンベエにはしなかった。ハンベエは師がどんな人物であったか、良く知らないのである。ハンベエにとっては、ただ人の良い、優しい庇護者であったのみである。(お師匠様は伝説の武将だったのか。)「そのワクランバの戦いというのを教えてくれ。」

「ええ、ハンベエ知らないの・・・オイラも詳しくは知らないけど、30年前、トラトラ国とゴルラァ国がワクランバの地で大会戦を行ったんだ。トラトラ国三万人、ゴルラァ国一万人。最初は人数が多い

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