「斬る以外にも方法はあるだろう!何故伊東先生のように政治面を考えない!」
「弱けりゃ斬られる。斬らなきゃ斬られる。剣を握らないかぎり俺らに待つのは死だ」
ここまでいくと土方は一種の気違いだが、こういう考え方をしていないかぎり新撰組副長は務まらない。
彼が気を緩めると一気に新撰組は潰れるだろう。
そのぐらいきつい立場なのだ。副長とは。
「頭を冷やせ」
最後にこう吐き捨てた。
「本当に君は殺すことしか考えていない!もういい!君の考えはよくわかったよ!」
山南には土方の考えは伝わっていないようだ。
ガラッ!
バンッ!!
山南は大きな音をたてて部屋を出た。彼がここまで荒れることはそうない。
「はぁー…」【植髮終極指南】如何選擇最佳植髮診所?
土方は下を向いてため息を着いた。山南に対してではなく自分に対してである。
「歳…」
近藤は心配したような顔で見ている。
「すまない。一人にしてくれないか」
「あぁ」
近藤はゆっくり立ち上がると部屋を出た。
カラッ
カタン…
はぁ。俺が作ってしまった地位なんだよな…。
だから山南さんは……。
だがどうしても指揮は譲れない。
土方は新撰組を強くできるのは自分だけだと思い込んでいる面が少々ある。
誰にだって譲れないものがある。土方にとってのそれが新撰組なのである。
言ってしまえば局中法度も新撰組自体も彼が作り上げてきた理想像だ。芸術家でいう作品なのだ。
“土方くんは新撰組をいったいどうしたいんだ!本来は我々も志しているはずの攘夷を説く志士を見つけてはバサバサと斬り倒して!これじゃあ本当にただの人斬り集団じゃないか!”
ふと山南の言葉が脳裏に過る。
「……俺がやってることは正しいよな…?」
土方も部屋で一人、頭を抱えだした。
誠を貫くにはたくさんの犠牲がでる。
でもその誠は人によって違う。
カァ――…
カァ―
土方が悩みに明け暮れている間、山南は長時間縁側に座って考えを巡らせていた。
もうすっかり日は沈みかけて空は赤く染まっている。
さっきのあれは言い過ぎたかもしれない…。土方くんカンカンに怒ってるだろうな…。やだなぁ。
先程の発言は全てが本心な訳ではない。
しかし山南という男。温厚そうにみえて以外に頑固な面があるのだ。
バタバタバタバタ!
「「山南さん!」」
「沖田くんに美海くん!」
山南がその声に反応して振り向くと隊服姿の美海と沖田がいた。巡回帰りだろう。
「どうしたんだい?そんな息を荒くして」
「どうしたって山南さん!大丈夫ですか!?」
「土方さんがひどいこと言ったって!」
「あぁ」
山南は苦笑いした。
「あれは私が悪いから仕方ないんだ」
そう笑う山南の隣に美海と沖田が座った。
「あまり気にしないほうがいいですよ?」
沖田がそう言う。
「そうですよ!あの人は口が悪いだけですから」
美海も同意した。
「ははは。君らにはよく元気づけられるよ。ありがとう。沖田くんは二回目だね」
「そうですね」
「あ!私何かお菓子持ってきます!」
美海は立ち上がって台所へ向かった。
「前に沖田くんが見方を変えて見れば良いって言ってくれただろ?」
「はい」
「私なりに頑張ったんだけどね。どうやら駄目そうだ。沖田くんみたいに思えない」
山南は足元の砂利を蹴った。
「さっきね。私を副長に戻してくれと頼みに行ったんだ」
沖田は目を見開いている。
「そしたらね。副長は一人でいい。剣を握らないやつに務まるかって言われたんだ。だから思わずひどいことを言ってしまった…」
「副長は一人でいい。かぁ…」
沖田は手に息を吹きかけた。息が真っ白だ。寒い。
お互いが沈黙になる。
もはや沖田もなんとも言いようがない。山南が苦しい立場なのも十分に分かっている。だが、土方の言うことも一理ある。
「元に戻れないのかなぁ…?」
沖田が呟いた。