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keizo

ゴンザロはゴンザロの算段で事に臨んだのだ

そして又、ゴンザロはゴンザロの算段で事に臨んだのだ、その死を悼む事は許されても、独りよがりに己を責め、イタズラに悲嘆する事はむしろゴンザロに対する冒涜であると考える事とした。ゴンザロの死ぬ直前のセリフまではハンベエには届かなかった。脱走兵達もそこまで込み入った事情は知らないのである。だが、元々の第5連隊兵士達はゴンザロの死を憐れみはしなかった。きっと、納得付くの死であったに違いないと信じたのである。そして、次々に飛び込んで来る脱走兵達を見ながら、(ゴンザロがやってのけたのだ。)とその功績を胸中で讃えた。「ハンベエさん、王女様が、エレナ姫が会いたいとやって来ています。ロキも一緒です。」パーレルが息急き切って走り込んで来た。ハンベエはこの時、ハナハナ山の中腹に設置した天幕の中で休息を取っていた。パーレルの報告にハンベエは、無愛想な面をぶら下げて天幕から出た。見ると、既に天幕の前にエレナ、ロキ、Yaz避孕藥イザベラ、おまけでスパルスが勢揃いしていた。流石にモルフィネス一派は此処には来ていない。きっと何処かで別れたのだろう。「ロキ、無事だったか。」ロキの姿を見つけ、ハンベエは表情を緩めて言った。「当ったり前だよお。見事大役を果たして、宰相の人柄を見極めてきたよお。」ロキは胸を反らせて大威張りに言った。ハンベエは次にエレナとイザベラを代わる代わるに見た。まさか、エレナとイザベラが相携えて訪問して来ようとは、ちょっとばかし心臓の鈍くできているこの男も大いに驚いている。イザベラについては、ロキの身の上を頼んでいたので、ハナハナ山にやって来た事は驚かないが、エレナとイザベラが揃ってやって来るとは想像の枠をはみ出していた。「イザベラ、約束通りロキを守ってくれたようだな。改めて、礼を言う。」ハンベエにそう言われたイザベラは、何処か曖昧な悪戯っぽい笑みを浮かべて黙っていた。「さて、王女、命を狙ったイザベラと仲良く訪問とは、恐れ入ったが・・・一体何しに来たのかな。」ハンベエは露骨に怪訝そうな表情を浮かべて、エレナに言った。「あら、ハンベエさん。随分迷惑そうなお顔ですが、来て悪かったかしら。」「いや、歓迎する。色々と話も有るだろうから、とりあえず、天幕の中へ。狭苦しいが、我慢していただこう。」皮肉めいたエレナな言葉に動ずる事も無く、ハンベエは三人を天幕の中に誘った。この男の面と胸の肉は規格外の厚みを持っているようだ。四人は天幕の中に入り、スパルスは外に残された。おまけだから仕方ない。天幕の中で、ハンベエは、エレナとロキのゲッソリナ脱出、タゴロローム訪問、軟禁、脱出、逃避行の顛末を聞いた。専ら説明したのはロキであった。「驚く事ばかりだ。モルフィネスがね。奴を殺し損ねて大いに悔やんだが、殺すばかりが能じゃ無かったわけだ。しかし、バンケルクは何故王女を軟禁したのかな。」ロキの説明の中では、バンケルクとエレナのやり取りは抜け落ちていた。つまり、モルフィネスがバンケルクを見限る事になったバンケルクのエレナに対する恋情の部分はハンベエに伝わらなかったのである。「それは、私と将軍の間で少し諍いがあったものですから。」「諍い?・・・まあ、聞かぬ事にして置こう。だが、王女を軟禁するとはバンケルクも大間抜けな真似をしたものだ。墓穴を掘るとはこの事だな。」ハンベエは吐き捨てるように言った。「墓穴を掘る?」ハンベエの辛辣な言葉にエレナは驚いたように眼を見開いた。打って変わって不安の色を顕にしている。「今、タゴロロームからひっきりなしに兵士達がこちら側に寝返って来ている。もうちょっと増えたら、逆に奴を叩き潰してやれるというものだ。モルフィネスもいない事だし、随分とこっちに有利になった。」エレナの胸中を知ってか知らずか、ハンベエは冷ややかに言った。叩き潰す、というハンベエの穏やかならぬ言葉を聞き、エレナの顔が一瞬にして蒼白になった。

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