本部でぽろっと独り言を漏らす、今まで敵に城壁を許したことは無いが、こちらは傷だらけで交代も居ない。気力が下がっている、日々見回りで声を掛けてはいるが、人は希望を失うと途端に活力を一緒に失ってしまうものだ。
「親衛隊は何があろうと必ず最後の一兵まで戦い抜きます」
それは心配していない、全滅するまで戦うだろうさ。だが少数で城は守れない、支援をする奴らがいてようやくだ。北営軍も顔色が悪い、住民もそろそろ怪しくなってきた。城内の食糧事情が悪化したら急速に状況が変わる。
「解っている。international school admission 外の魏軍は十万弱といったところか、よく持ちこたえている」
今思えば速攻の奇襲だったにしても、よく寓州城を落とせたものだ。あの時は援軍が来る間もなく城内の潜伏兵が門を一つ開けてしまったからな。内側からの異変に弱くなるのは普通のことだ、要警戒なのは陸司馬だって重々承知、今更なにもいうまい。
「守備兵の状態は七割ほどが軽傷以下、まだ戦えます」
あと二日が喫水線を割るラインか、いや半日の差で瓦解の可能性があるな。
「明日は本部の兵を防戦に使い、疲労が激しい部隊を休養に充てるんだ」「ですが、それでは転機の際に動きが制限されてしまいますが」
皆が等しく負傷、疲労していては精彩さにかく。出来ないことを出来るようにするためにも、無傷の部隊が必要だ。
「戦術的な転機は確かに潰えるが、ここを支えるのが戦略的な転機と解釈するんだ。もし陥落すれば蜀は押し返されてしまう」
そして二度と中原に進出することは無い、孔明先生の寿命の都合でな。俺一人がどうこうしたところで、兵站が破綻するのは目に見えているうえに、首都の統制が崩壊するだろう。
「ご命令とあらば」
本部の親衛隊が戦力を下げれば、俺の身辺警護がおろそかになる、こいつはそれを気にしているんだ。
「俺は決して不死ではない。だが、戦場で自身を守ることぐらいはできる、心配するな」
「ご領主様を決して危険にはさらさせません」
軽く手を振って今晩は退室させる。寝所に入ると今後について考えることにした。
戦況は悪い方向に流れて行っているが、これは想定の範囲内だ。宛に兵力を向けなければどうなっていた? 野戦で全力交戦の最中にこの報を聞いたことになる、そうすると魏は守りを固めて援軍が来るのを待っていただろう。そして、不利な城攻めを強行して、糧食も不足がちにか。
不幸中の幸いとしよう、十万の魏軍を一万で相殺していると。地理的な優位を築くことができる時間を稼いでいるんだ、ここが悪くても別の場所では良いと信じている。魏延はどうだ、荊州で呉の陸軍と鉢合わせるのは時間の問題。樊城は落とせない、永安へ退くわけにもいかない、膠着するな。
洛陽方面は守りで一杯、これを保持しているだけで充分だ。間道を抜けていずれば浸透されるだろうが、かなりの時間防衛を続けることが出来るだろう。成都での結果次第で間に合うかどうかが変わって来るか。これについては孔明先生以上の人材は居ないんだ、待つしかない。
員数外の動きは兄弟だな、蜀の守りについてくれても安定するし、既に軍勢を送ってくれているありがたい。馬金大王は地方を荒らしている、そちらにも相応の兵力を割くだろう、張遼の軍が向かってくれるなら更なる時間稼ぎになるが、そうはしないだろうな。
大鮮卑の足音も聞こえてこない、進み続けているならそろそろ許都の傍に姿を現すはずだが来ない。あいつらにも事情もあれば限界もある、頼りにするのはお門違いというものだ。目が居行き届いていないな、通信機が無いのがこうも辛いと思えたのは久しぶりだよ。