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keizo

「私が淹れるコー

「私が淹れるコーヒーはとても美味しいと、家ではコーヒーは用意されていないからと言われて、朝のコーヒーを喜んで下さいました…これについては?この言い方で妻に言えばどれだけ相手が傷つくか考えませんか?家でコーヒーを飲めないと言った覚えはあります。ですが用意されていないなどと言った覚えはない。しかも妻が悪阻の時の話です。コーヒーの匂いで咽せてしまうからしばらく家では飲まない様にしていた。武藤さんにコーヒーを淹れるように指示した事もないですが?」

 

「指示…されなくても、毎日飲まれていたらお淹れするのは当然の事です。」

 

「秘書として?」

 

「はい。」

 

「武藤、それなら聞くが、じゃあ、どうして上司の妻へ秘書の対応が出来てないんだ?」

 

武藤が顔を向けると、怖い顔付きでキツい目付きで睨む倫也がいた。

 

 

「こんな事も言ってますね。」

と言うと先程と同じく、用紙を見ながら淡々と倫也はそれを読み上げる。

 

「 お買い物をされている所に遭遇した事も、そうでしたわ。その時は料理をお作りになるとお聞きして、びっくりしたのを覚えています。奥様がいらして、お夕飯を帰ってからお作りになるなんてと、疲れてお帰りなのに……私なら毎日、作って待っているのにとお伝えしたんです。お困りになられた優しいお顔でありがとう、と……言って下さいました。」…確かに会ったな、これも俺が作る約束を妻としたんだと確かに武藤さんに言った記憶がありますが?それに付いては一言もないな。」

 

「それは………「こんなのもある!」

 

武藤の言い分を遮り、倫也は続ける。

 

「妻が君の出したお茶を飲まず、持参したお茶を飲んだ瞬間、失礼に当たると言い、「高卒で学がないから…仕方ないですね?新藤さんもどうして奥様とご結婚されたのかしら?出会いが遅かったから……仕方ないですね。」と言っている。出会いが遅かった?誰と誰の事だ。」

 

「新藤さんと私です!出会いが早ければきっとうまく…「君は自分の良い様にしか解釈しないのか?俺は君と先に出会っていても君の様に自分の都合でしか動かない女性など好きにはならない!仕方ない?そんな言葉で俺と妻の結婚を勝手に片付けるな!!」

 

武藤の言葉を途中で遮り、倫也は大きな声で言い切って肩で息をした。

大きく息を吐くともう一度冷静になれと息を吐き、言葉を続けた。「どれだけ遅くに出逢おうとも、倫子を選ぶ。彼女は真面目で真っ直ぐでもし登録に来たとしても、どんな会社に行っても例え石を磨けと言われても、ずっと…光るまで磨き続ける人だ。そんな人だから、優し過ぎて単純で無鉄砲で真っ直ぐで素直で…倫子の優しさが傷付いた俺を包んでくれたんだ。君が倫子に話した事、話しただけだと言われても許す気にはなれない。」

 

最初と違い、冷静で落ち着いた声ではあったが、怖い顔、怖い声、低く響くドスの効いた言葉は、武藤を怯えさせるには十分だった。

 

「そ、そんな…奥様を虐めようとかそんな考えは…私はただ…軽い気持ちで……。」

震えて言い出した武藤を強い目で睨み、目を逸らすと倫也は出逢った頃の倫子を思い出し、呟く様に話す。

 

「女性は正直…面倒と思ってました。倫子は…俺より面倒臭がりでそのくせ、会いに行くと断れずに放っておけずに、話をしてくれた。疑う事を知らない子供でしたよ。そんな彼女を愛しいと、いつの間にか思う様になって放っておけなくなったのは俺の方です。付き纏って付き合って欲しいと時間をかけて口説き落としたのも俺です。やっと手に入れた俺の妻は倫子だけです。倫子を傷付ける行為は絶対に許さない。」

 

「……ご、ごめんなさい……申し訳ありませんでした。」

 

今度は微笑みを向けて倫也が言い切ると、震えながら武藤は床の上に座り込んだ。

 

「この会話については全部を認めるという事でいいね?」

菅野が聞くと、座り込んだままで武藤は小さく頷く。

 

「では、この映像を見てもらう。君が秘書室から無言電話を掛けた映像だ。掛けた先の宇佐美楓さんのご主人から無言電話であった事、その際の電話番号が秘書室の番号だった事は確認されています。これも認めますね?」

 

菅野が机の上のノートパソコン画面をくるりと回して、武藤の方向へ向けた。

当然、他の人間にもその画面が見えた。

 

「……はい、認めます。」

素直に答えると、俯いたまま武藤は動かなかった。

 

「では…処遇を言い渡します。うちにこの様な悪戯をする人間はおけない。お試し期間でしたのでうちの社員ではない、登録は解除、二度とうちに出入り禁止、本来はですが……一度のみ、登録社員、まぁ、うちで研修という形で登録部で一から事務として働いてもらいます。」

菅野の声に武藤は信じられないという表情で俯いていた顔を上げる。

宇佐美と倫也は諦めに溜息と共に冷たい目でそれを見ていた。

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