いた。
箱の上蓋を開けると、中から黒漆塗りのに収まった、長さ六寸四分のが現れた。
その短刀には、金で道三の「二頭波」の紋が模様のように入れられている。
道三は箱の中から短刀を取り出すと
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そう言って短刀を床に置き、それを勢い良くサッと前に押し出した。
短刀は床板の上を真っ直ぐ滑り、下座に座る帰蝶の膝元にぶつかった。
「…これを…私に?」
帰蝶が恐る恐る短刀を手に取ると、道三は口の両端をからそなたへ贈る、真の婚礼道具と心得よ」
「真の、婚礼道具」
「そなたいつか申していたであろう。例え織田へ嫁いでも、儂がきっと守ってくれる故、自分は死なぬと」
「はい…。申し上げました」
「そなたはの娘。何より尾張攻略の為の重要な布石であり、またでもある。
我が天下の為にしてくれる者を、儂がてる事は決してない。
尾張と再び戦になったとしても、帰蝶、そなたの命だけは儂が全力で守ってみせよう」
「父上様──」
道三の頼もしい言葉が、帰蝶の小さな胸を軽くいた。
「されど、己の身を守れるのは常に己自身だけじゃ。
命を狙われるのは、必ずしもを向けて来る者が、必ずしも敵ばかりとは限らぬ。
……帰蝶。もし儂の手の及ばぬ所で身の危険を感じた時は、その刀で己を守れ」
帰蝶の両眼が機械的に短刀へ向いた。
さすれば、これぞ正しく私の守り刀か──。
短刀を握る帰蝶の手にぐっと力がこもった。
「そして、信長という男が真のうつけであったならば、その短刀で刺し殺せ」
ゆくりもなく放たれた父の言葉に、帰蝶は大きく目を見張る。せられました?」
「信長が真のうつけであったならば刺し殺せと申した」
「父上様っ」
帰蝶は思わず目を泳がせ、眉間に深いを作った。
「人の噂はとかく口さがないもの。信長という男が、真のうつけかどうかも、この美濃からでは分からぬ。
うつけの皮を被ったかな策士という可能性も十分にあろう。
もしも信長が策士ならば、この儂と先々で刀を交える価値もあろうが、真のうつけならばそれにあらず」
「──」
「早々にそなたの手で信長を始末せよ。さすれば尾張一国を手に入れるのもうなろう」
「なれど私は……皆が思うほど武術には長けておりませぬ。左様な真似が、出来るかどうか…」
「術などいらぬ」
「 ? 」
「おなごには、確実に敵を討ち果たせるがあるであろう」
帰蝶はし考えを巡らせると、やおらハッとなって、含み笑いを浮かべる父の
「よもや、で信長殿を殺めよと !?」
「くのも立派な術の一つじゃ」
言うなり道三は、はははっと豪快な笑い声を上げた。
帰蝶は、まるでりの時を過ぎたえる返答をしなければならないのだが、帰蝶にはなかなかそれが出来なかった。
本当に、自分にそんな大それた真似が出来るのかどうか。
そんな事を真剣に考えていた。
人は勿論、鳥やネズミ、昆虫だって殺した事がないのである。
嫁いだからといって、いきなり自分の中に武将の心が芽生える訳でもあるまい。
……しかし、やらなければならない。
自分は人質であり、間者であり、布石なのだ。
戦乱の世に生まれた女の常として、生家の為に働かねばなるまい。
帰蝶は肩で息をしながら、ゆっくりと
「…分かりました。それが父上様のお望みとあらば」
「期待を裏切るでないぞ」
「最善をくしまする。──されど」
帰蝶は短刀を握っているその手を、道三に目掛けて真っ直ぐ伸ばした。
「もしも信長殿がただのうつけでなく、私が一生を