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keizo

さしたる理由もなく郷

 さしたる理由もなく郷一つを虐殺したこともある、またそれを咎めるような側近もいない。黙っていれば害がないという保証が一切ない、近寄らないのが一番だ。

 

「良い噂は聞かぬな。春の租税の減税措置が布告されているが、あれは荀爽叔父の進言だったと聞いている」

 

 どのような意図で布告したか、避孕藥香港 少しでも頭が回るような者ならばしっかりと見抜いていた。とはいえ住民としてはなんら悪いことはないので、そういうものだと受け入れている。

 

「その叔父上も世を去り、朝廷は今や董卓の専横を見てみぬふりをするしか御座いません。潁川で狼藉が行われるのを座して待つこともないでしょう。良い避難先を用意しています、仲豫殿もどうかご一緒に」

 

 じっと見詰める。何せ郷里で暮らすことが当たり前で、それを捨てて別の場所で生きていくのは道を外れることだと信じていた。そういう教えが先祖代々続いている、自分の代でそれを壊すのはかなりの勇気が必要になる。

 

「……多くの者がこの地に残るだろう」

 

「では仲豫殿も行く事は難しいと?」

 

 出来れば死んでほしくない、憐れみと言うよりは荀彧の希望であり、期待だ。誰も他人に未来を強要など出来ないと解っていても願わずにはいられなかった。

 

「さだめとは人では変えることが出来ぬものだ」

 

「ですが――」

 

「何も行かぬとは言っておらぬ。文若がそうまで惚れ込んだ人物が居るのであろう、ならばさだめに逆らってみるのもまた一興ではないか」

 

 相好を崩して必死な荀彧に微笑みかける。

 

「だが先に言ったように多くの者が残るはずだ、私はそれを翻意させることが出来そうにないのが情けない」 ずっと郷里にあって、誰がどういう想いをしているかを知っている。だからこそ、無理だと思うことは無理で、凶事が迫っていようと変えられないことがあると悟った。

 

「我が君に真っ先に紹介させて頂きます。董卓軍は刻一刻と迫っておりますので、私は家々を巡り説得して参りますゆえこれで失礼を」

 

「いや待つんだ、私が家長らをここに呼び集める。その方が早かろう、文若は少し休め」

 

 言うが早いか下僕を呼んで急ぎ招集をかける旨、手配をさせた。荀氏の本家筋、その当代当主が大急ぎで重要な話があると言われれば、仕方なくやって来るだろう。陽が暮れてしまった頃に、本家に三族の代表が揃う。

 

 ここでの三族は、従兄弟らに、その妻らの父親、そして自らの妻の父や兄らだ。ようは近しい親族、姻族をさしている。文聘は別の部屋から少し覗いてみたが、二十代から四十代の美男が多かった。一部違うなとおもったのは、きっと姻族の父親当たりだろうと唸る。

 

 荀悦が状況を説明し、荀彧が避難先を明かし希望を募った。特に陳紀らも呼ばれていて、拒否すると思っていたが「ではまたお邪魔するとしよう」と気軽に応じたせいで場がざわつく。あの陳紀がまさかそう言うとは思ってもみなかったのだ。

 

「私も暫し郷を離れ避難する。答えは今出さずとも構わないが、明日の昼過ぎには潁陰を離れるので行くならば間に合うように準備をするように」

 

 残るだろうと思っていた荀悦までもがそのようなことを言うので、ざわめきが大きくなった。とはいえ十日、二十日とかけて移動するのは不安しかない。そんなことをした経験がある人物は殆ど居ない。

 

「文若よ、小黄までの道程はいかようか」「東へ逃れるため許から扶溝へと入り、そこより北へ陳留県を通過し小黄に向かうつもりです」

 

 東には董卓軍は居ない、何と無くではあるが納得できる。だが心配は尽きない。

 

「文若殿、東の山地に寄れば賊徒が出る可能性が高い。そうなればあべこべに危険に飛び込むようなものでは?」

 

 東の賊徒、黄巾賊の名残で各地に散っている奴らの事だ。潁川はそいつらのたまり場だった、今でも千人単位であちこちで略奪をして回っている。

 

「仰る通りに御座います。ですが我が君より兵を預かっており、二人の部将も付けて貰っておりますのでご心配には及びません」

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