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keizo

そろそろ手が痛

そろそろ手が痛くなって来た頃。最後の組、一番組の隊士がぞろぞろとやって来た。馬越は恥ずかしそうに顔を赤らめながら身体を両手で隠そうとし、山野は堂々と歩いてくる。

 

「よっ、桜司郎。見ろよ、この俺の筋肉を。イイ身体してんだろ」

 

「はいはい。後がつっかえるから、早く進んでね」

 

 

 極めて冷静に、意外懷孕 呆れたような眼差しを向けた。もう何十人ものの褌一枚の姿を見てきたが、到底慣れるようなものではない。馬越に関しては余りにも恥じらうものだから、犯罪の匂いすらして来る。

 

 一番後ろに沖田の姿を認めた。裸など見たことは無いが、何処か痩せたような気がすると思いつつじっと見てしまう。

 

「桜司郎君?随分お熱い視線で、沖田先生を見ていらっしゃる」

 

 山野はニヤニヤとしながら、そう発言した。

 

「え、あっ、いや……その!!」

 

 桜司郎はハッと我に返ると、たちまち顔を真っ赤にして狼狽えながら目を逸らす。

 その反応が面白かったのか、ドッと部屋では笑いが起こった。当の沖田はキョトンとすると、ニヤリと笑う。

 

 

「何ですか?桜司郎さんの助平」

 

「す、助平って……!もう、八十八君のせいだからね!」

 

 

 談笑しながらもやがて沖田の番となり、松本の前に座った。桜司郎は時折横目でそれを見る。

沖田の手に触れた松本は厶、と声を上げた。そして聴胸器を手に取る。一通りの診察を終えると、松本は顔を顰めた。そして山崎に何か指示を出す。

 

 

「先生。私は異常無し……ですよね?」

 

 沖田は涼しい顔をして、念を押すように松本に問い掛けた。松本は沖田の目を見る。沖田は視線で一番組の隊士たちを見た。つまり、"何かあっても今はそうして欲しい"と訴えているのだろうと松本は心得る。

 

 

「ああ……。あんたは異常無しだ」

 

 それを聞いていた桜司郎はホッと息を吐いた。だが、同時に違和感を覚える。何故異常無しなのに、険しい表情になったのかと。

 

「……鈴木さ、次は御三役を呼んで

 

 南部の声に、桜司郎は立ち上がり近藤らを呼びに向かう。沖田の事が気になるが、法眼が異常無しと言うのであれば深入りは止めておこうと自分に言い聞かせた。

 

 一番組の隊士が全員居なくなるのを見た松本は、沖田の耳に口を寄せる。

 

「……後で話がある。自分の事だから、大方検討は付いていると思うが」

 

 深刻そうに言われても、沖田は何処吹く風といったように穏やかな表情をしていた。

 

「分かりました」

 

 

 沖田は頭を下げると、去って行く。 桜司郎に連れられ、近藤と伊東がやって来た。一人居ないことに気付いた松本は腕を組んで首を傾げる。

 

「土方君はどうした」

 

「あ……断られちゃって」

 

 医者嫌いというだけあり、断固として拒否をされた。強くは出られず、桜司郎はそのまま引き下がってきたのである。

 それを聞いた松本は苦笑いを浮かべた。事前に近藤より、土方について聞いていたのである。

 

「仕方ねえな。私が後で出向こう。じゃあ、近藤君。脱いで前に座ってくれ。あれから胃痛はどうかね?」

 

 松本の言う通りに、近藤は潔く着物を脱ぐと前に座った。桜司郎は脱いだそれを受け取り、綺麗に畳む。

 

「先生に胃腸薬を煎じて頂いてからは、随分と良くなりました」

 

「うむ。顔色も随分良くなったようだ。胃痛を拗らせると、穴が空くからな。適度に息抜きをしてくれよ」

 

 

 近藤と伊東の診察の間に、桜司郎は南部と共に診察結果の集計を行った。それを見た桜司郎はえ、と声を漏らし顔を引き攣らせる。

 

「これは……」

 

「んだ。こりゃあ酷ェ」

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