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keizo

再び叫んだ浪士。

再び叫んだ浪士。低く身構えた総司に体当たりをする勢いで突っ込んで行った。

 

 

重心を落として刀の柄に手をかけた総司は,流れるように浪士とすれ違った。

 

 

「ぐっ!」

 

 

小さな呻き声を最期に,浪士の体は地面にうつ伏せた。

静かに赤いモノが地に滲み込んでいった。【中年脫髮危機】一文拆解地中海脫髮成因 @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::

 

 

「おい!斬ってどうする!俺は捕まえてくれって言ったんだよ!!」

 

 

永倉は面倒臭そうに後頭部をかきむしった。

何の感情も見せずに懐紙で刀の血を拭い取る総司がどんな心境でいるか分からない訳じゃない。

 

 

「土方さんに怒鳴られるの俺は御免だぜ?」

 

 

永倉はポンと総司の肩を押した。

 

 

「大丈夫ですよ。私は怒られ慣れてますから。」

 

 

「お前はな。」

 

 

「永倉さんや原田さん程馬鹿な事して怒られた記憶はないんですけどねぇ。」

 

 

総司は胸の前で腕を組み,うーんと首を傾げた。

 

 

そうやって話し込む二人に,終始目撃していた町人達は冷ややかな視線を送った。

 

 

さぁ引き上げるぞ 。鬼副長に報告しなきゃなんねぇ。」

 

 

その視線から総司を庇うように永倉は総司の背中を押して,引き連れていた隊士達とその場を後にした。

 

 

 

 

 

新選組の悪い話はすぐに広まる。

色んな人間が出入りする三津の店では実に様々な話が落ちて行く。

 

 

それが嘘か本当かは分からない。

いい事だろうが悪い事だろうが,多くの話で溢れかえる。

 

 

「恐ろしいわ!さっきそこで新選組がまた斬りよった!!」

 

 

入って来たばかりのお客の物騒な話題に功助とトキの表情が曇る。

姿は見せていないけど,三津が聞き耳を立てているのが分かっているから。

 

 

「そんな大声で言いなさんな。」

 

 

困惑した顔をする功助に構う事なく話は続く。

 

 

「しかも斬ったん誰やと思う?沖田はんやで!沖田はん!」

 

 

「やっぱり所詮は壬生狼や。あんなよう笑う兄ちゃんかて人斬りやった。

みっちゃんの前で猫被ってただけで中身は恐ろしい化け物や。」

 

 

『化け物…………。』

 

 

総司が見せる暖かい笑顔も,冷たい目も,三津は知ってる。

でも今となっては彼や仲間を否定も肯定も出来ない。

 

 

『ここを出られたら何か変わるやろか……。』『勝手口からやったら出れるやろか。』

 

 

二人が店番に勤しむ今が好機。

三津はそろりと動き出した。

忍び足でゆっくりと,勝手口へ向かった。

 

 

少しでも外の事が知りたい。

籠の中の鳥はそっと勝手口に手をかけた。

 

 

『出られる!』

 

 

高鳴る胸,逸る気持ちを抑え込みながら戸を開いた。

 

 

日の光が眩しすぎるぐらいに感じた。

久方振りに吸う表の空気。

 

 

「大丈夫やんな。」

 

 

きょろきょろと周囲を見渡してから一歩外へ踏み出した。

 

 

「やった……!!」

 

 

見つかる前に店から遠ざかろう。

そう思って駆け出した。

 

 

見つかったらこっぴどく叱られるのは分かっているが,それはその時覚悟しよう。

今は思うがままに動きたい。

 

 

「まず宗太郎に……。」

 

 

会いたい。

 

 

まさか宗太郎にまで会わせてもらえないなんて思いもしなかった。

 

 

「お待ちっ!」

 

 

「ひゃっ!」

 

 

張り上げられた声に振り返ると,

 

 

「三津!!」

 

 

その形相ときたら鬼と化したトキが仁王立ちでこちらを睨みつけている。

 

 

「ごごめんなさぁぁぁいっ!!」

 

 

三津は着物とは思えない速度でその場から逃げ出した。

 

 

ここで捕まる訳にはいかないんだ。

 

 

『せやなくて私何か悪いことしてる!?』

 

 

外に出る事なんて,みんなにとってごく当たり前の事。

三津だってその至って普通の事をしているだけ。

 

 

「今日だけ許して!!」

 

 

後ろを振り返る余裕もなく,ただひたすら走り続けた。

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