土方の髪が顔にかかって,三津はそれを払いのける様な仕草をしたがその手はまた布団の上に落ちた。
「起きねぇのかよ…。」
無防備なお前が悪い。
啄む様な優しい口づけを何度も何度も落とした。
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意識の無い相手にそう言うのも虚しいが,これ以上は自制がきかないと思った。
「口止め料ちゃんといただいたぜ。」「皆様お世話になりました。」
門の前で見送りに出て来たみんなにペコリと頭を下げた。
また帰って来いよとの言葉を貰ったが“はい”とは言えずに笑顔だけで答えた。
「おい行くぞ。お前はちんたら歩くから遅くなる。」
黒谷へ行くと言う近藤と土方に途中まで送ってもらう事になった。
「何でそんなに不機嫌なんですか…。」
明らかに土方の人相が悪くて八つ当たりとしか思えなかった。
「うるせぇ。」
『誰のせいだと思ってんだ。』
あの後自分を抑えるのに必死で寝付けなかった。
そうだ,寝ている三津にあんな事をした自分が悪い。だがそれを認めたくはない。
『舌入れてたら流石に起きただろうな…。』
黒谷には何があるの?誰がいるの?と近藤に無邪気な笑顔で聞いてる三津の横顔を見つめた。
すると急に三津が土方の方を振り返った。
邪な事を考えていたからドキッとした土方は,
「見てんじゃねぇよ!」
三津の後頭部を思い切り叩いた。
「なっ!見てたのはそっちでしょ!!」
『酷い目に遭った…。』
後頭部を擦りながらとぼとぼ歩く。店に近付くに連れていつものようにご近所さん達がお帰りお帰りと声を掛けてくれた。
機嫌を良くして鼻歌交じりにお店の前に来た時だ。
「お帰りなさい。どこに行ってたのかと思いました。」
くるっと振り返ればにこにこ笑う伊藤が立っていた。
「あ…こんにちは。」
嫌な予感をビシビシ感じて笑顔が引き攣る。
「聞きましたよ?鬼について壬生へ行ってたって?鬼退治でもなさってたんです?」
「いや,これには理由が…。」
「ではその理由は先生に直接お話ししていただけます?」
伊藤の笑顔が怖かった。
「と…とりあえず…お茶飲んできます?」
すると怖かった伊藤の顔が泣きそうに崩れた。眉は八の字,口はへの字。三津の誘いに首を縦に何度も振った。
いつものように表の長椅子に腰を掛けると伊藤は昨日の出来事を嘆き始めた。
三津が不在の所へ吉田が訪ねたと言う。するとお客達がご丁寧に三津は壬生に行って居ないよと教えてくれたらしい。
“土方の旦那が迎えに来た”と。「分かります?分かります?帰って来た吉田さんの機嫌の悪さ…。」
三津には容易に想像がついて首を激しく縦に振った。
「そこへですよ…桂さんが私にお遣いを頼んできましてね…冷えきった表情で“三津なら居ませんよ。迎えに来た土方について壬生へ行ったそうですよ”って言い放ったんです。
それを聞いた桂さんの様子想像つきます?」
その質問にはもう怖くて答えられなかった。
「“三津が帰って来たら報告するように”っていつもの笑顔で仰りました…。なのでこれから帰ったら報告しますね…。」
伊藤は早く帰らなきゃとげっそりした顔で帰って行った。
『絶対怒られる…。』
だけどもこればっかりは仕方ない。事情があるんだ。話せば分かってもらえると信じたかった。
翌日,三津は宗太郎の所へ遊びに行こうと店を出た。
「こんにちは。」
急に耳元で囁かれ三津の肩が大きく跳ねた。すぐ背後に桂がいた。
「びっ…くりした…。」
「ちょっと付き合って。話をしよう。」
自然な流れで三津を脇道に連れ込んで人気のない方へない方へ歩みを進めた。
『お…怒ってる…。』
何も語らない背中からピリピリした空気を感じ取った。
いつもみたいに顔を覗き込んでも来なかった。嫌われたのかも知れない。