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keizo

慌てて玄関に向かうと

慌てて玄関に向かうと、本当に甲斐がいた。

今日は、私と蘭は甲斐の車に乗せてもらうことになっている。

でも、家まで迎えに来てもらうのも悪いと思ったため、大通の駅で待ち合わせをしていたはずだった。

 

 

「甲斐、どうして?」

 

 

「サプライズで迎えに来た。驚いた?」

 

 

驚く私を見つめながら、甲斐は満足そうに微笑む。

 

 

三日前、指數 期貨 職場で甲斐と顔を合わせたときに、話の流れで温泉旅行の日の朝にもずくを実家に預けに行くことは伝えていた。

 

 

でもまさか、わざわざ迎えに来てくれるとは思わなかった。

 

 

「驚くに決まってるでしょ……とりあえず上がって。出発までまだ時間あるし、お茶でも飲んでく?」

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 

以前も思ったけれど、甲斐は私の実家の光景に驚くほど馴染んでいる。

例えば久我さんがこの家にいる姿なんて、あまりに不自然過ぎて想像出来ない。

 

 

「甲斐くん、サッカーのゲームしない?姉ちゃんはRPGとかテトリスは得意なんだけど、サッカーとか競技系のゲームは弱すぎて相手にならないんだよね」

 

 

「確かに。七瀬、不器用だもんな」

 

 

二人にバカにされるのは癪だけれど、普段から甲斐に懐いている翼は、やっぱりどこか嬉しそうだ。「甲斐、コーヒーと緑茶と紅茶どれがいい?」

 

 

「じゃあコーヒーで」

 

 

「姉ちゃん、俺にもお願い」

 

 

既に紅茶を飲み終えていた私は、キッチンに立ちケトルでお湯を沸かし始めた。

 

 

コーヒーに合いそうなお菓子もいくつかピックアップし、お皿に並べる。

その間、甲斐と翼はサッカーゲームをしながら会話を楽しんでいた。

 

 

二人の会話が、キッチンの方まで聞こえてくる。

最初は翼が甲斐に恋の相談をしていたけれど、途中でいきなり話の風向きが変わった。

 

 

「翼も好きな子とか出来る歳になったんだな」

 

 

「一応俺、もう高2だからね。でも同級生は皆中身が子供っぽくて嫌なんだ。付き合うなら、年上がいい」

 

 

どうやら翼が今片想いしている相手は、年上の女性らしい。

自分だってまだまだ子供のくせに、同級生は子供っぽいから嫌だなんて生意気だ。

 

 

「翼は七瀬みたいな人がいいんだろ?お前、だいぶシスコンだもんな。だから年上好きになるんだよ」

 

 

「別にシスコンじゃねーし!」

 

 

少し照れながら否定する翼が可愛くて、キッチンの方から声をかけようとしたときだった。

 

 

「ていうかさ、甲斐くんも彼女出来たんでしょ?」

 

 

私が気になっていたことを、翼は甲斐に直球で聞き出したのだ。「甲斐、コーヒーと緑茶と紅茶どれがいい?」

 

 

「じゃあコーヒーで」

 

 

「姉ちゃん、俺にもお願い」

 

 

既に紅茶を飲み終えていた私は、キッチンに立ちケトルでお湯を沸かし始めた。

 

 

コーヒーに合いそうなお菓子もいくつかピックアップし、お皿に並べる。

その間、甲斐と翼はサッカーゲームをしながら会話を楽しんでいた。

 

 

二人の会話が、キッチンの方まで聞こえてくる。

最初は翼が甲斐に恋の相談をしていたけれど、途中でいきなり話の風向きが変わった。

 

 

「翼も好きな子とか出来る歳になったんだな」

 

 

「一応俺、もう高2だからね。でも同級生は皆中身が子供っぽくて嫌なんだ。付き合うなら、年上がいい」

 

 

どうやら翼が今片想いしている相手は、年上の女性らしい。

自分だってまだまだ子供のくせに、同級生は子供っぽいから嫌だなんて生意気だ。

 

 

「翼は七瀬みたいな人がいいんだろ?お前、だいぶシスコンだもんな。だから年上好きになるんだよ」

 

 

「別にシスコンじゃねーし!」

 

 

少し照れながら否定する翼が可愛くて、キッチンの方から声をかけようとしたときだった。

 

 

「ていうかさ、甲斐くんも彼女出来たんでしょ?」

 

 

私が気になっていたことを、翼は甲斐に直球で聞き出したのだ。やってしまった………と反省している間に、甲斐が素早く私の元に駆け付けてくれた。

 

 

「大丈夫か?ケガは?」

 

 

「指、ちょっと切ったかも……

 

 

「どれ、見せてみ。翼!消毒と絆創膏持ってきて。あと掃除機も。こっち来るとき、ちゃんとスリッパ履いてこいよ」

 

 

甲斐は慌てることなく翼に的確な指示を出し、切った指の処置を施してくれた。

 

 

甲斐はこういうとき、本当に頼りになる。

 

 

……甲斐に触れられている、指が熱い。

 

 

「何やってんだよ。手、滑ったの?」

 

 

「あ……うん、暑くて汗かいてるからかな」

 

 

「気をつけろよ。そんなに傷は深くないから良かったけど」

 

 

……うん、気をつける。ありがとう」

 

 

甲斐の優しさにときめく日が来るなんて、思っていなかった。

 

 

甲斐にたった指一本触れられただけで、こんなにも泣きそうになる日が来るなんて、思っていなかった。

 

 

「はい、処置終了。掃除機かけるから、そこから動くなよ」

 

 

……はい」

 

 

私は言われた通り少しも動かずに、掃除機をかける甲斐の姿を目で追った。

 

 

その姿から、私は一瞬も目を離せなかった。

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