険悪なムードになりそうな時に李項が腰に履いていた剣を手にして、切っ先を鞘ごと床に叩きつけて注目を集める。
「策をあげるのは参軍の務め。これを採るか否かはご領主様が決められること、批判があるならばより良い代案を以てして言を封じよ。慣例や伝統的な教義によって策を退けるなど他者を萎縮させるのみだ」
「む……中領将軍、申し訳ございません」
李項のやつも言うようになったな、international school price 俺もそう思うよ。では仲裁をしておくとしよう。
「双方の言は理解出来た。黄参軍、真に徐将軍の死を悼み弔問に行くならば構わんな」
「はっ、それならばなんら問題など御座いません」
「そうか。ではこうする。鐙将軍に国家を代表して弔問の使者に出て貰う。その一団に偵察のみを目的とする者を付随させ、目的を果たす。やってくれるな」
武官列の先頭に立っている鐙芝が「徐晃将軍の勇姿、この胸に刻まれて御座います。そのお役目引き受けさせていただきます」自らの手で倒した武将を称賛した。双方右将軍ということもあり縁もある。
「鄭参軍、偵察の任務はお前が行え。全ては結果をだしてこそだ」
「御意。開戦の折には是非ともお傍に」
「良いだろう。郤参軍は弔問文を起草しておけ、蜀に相応しい態度をとることを忘れるな」
「ご命令通りに」
わだかまりはあるだろうが、全ては戦乱を収めるまでのこと、俺は決して歩みを止めはしないぞ! 捕虜はどうすべきか、共に戦って死んだのはきっと地元の兵で、降伏したのは一般の部下か。解放すればまた向かって来る可能性が高いな。南蛮方面へ移送すればよいか、とはいえ人員はそこまで割けない一気には動かせん。
「捕虜は百人単位で長安へ送り、舟で永安へ移送させるんだ。従順な者はそこで防衛につかせ、そうでないものは雲南まで行かせ兄弟の監視下におかせる」
そんな遠くまで送られたら二度と戻ってくることはできない、魏の為に何かをしようという気持ちが無くなればそれで良い。人口という面で一つの財産になり得ている、ここで処刑するのはなんだか勿体ないと思えた。
多少の余裕が生まれてきている、ということなんだろうか。
「各位の進言があれば聞くぞ」
鄭参軍が進み出た。実務的な話だろうな。目線を合わせると顎を小さく上下させて促す。
「利用出来るならばとことんこれを利用すべきです。許都へ使者を送り、徐晃の死を悼み弔い品を献上して偵察をしてみると言うのはいかがでしょうか」
「そのような背徳的な行為はいかがなものか」
黄参軍がしかめ面をして批判した。費参軍も郤参軍も良い顔はしない、董軍師もだ。一方で他の司馬や参軍らは真面目な顔で黙っているだけ。
「敵の首都へ堂々と入り込む機会をただ見逃すのは怠惰ではないだろうか」
「怠惰とは流石に聞き捨てなりませんな」
数日遅れで鐙将軍の軍も洛陽に戻ってきた、治安維持をする一部を残しての帰還。
「敵将徐晃を討ち取りました。得た捕虜は二千、他は悉く戦死です」
「ご苦労だ。鐙将軍の見事な指揮を見せて貰った、安定した運用に言うことは無い。遺体だが故郷へ送り返したい、扱いは丁寧に頼む」
「お言葉確かに承りました!」
「徐晃殿の本貫は河東郡楊県で御座います」
郤正がそんな情報を差し込んで来る、ここが河南ということだから近隣地域ってことなんだろう。わざわざ口出しするんだ、言いたいことが他にもあろうさ。
「そうか。誰に任せるべきだ」
「李中衛将軍が名代に。大将軍中侯名義で、長子徐蓋殿宛を」
李四兄弟は俺の名代として適切だ、そしてもし失われても代わりは存在しているわけか。郤正のやつも少しは戦争が解ってきているってことだな。
「李信俺の代理を果たせ」
「お任せ下さい!」
弔問の使者だ、邪険にされることは無いし、これを襲うような奴らも居ないだろう。もしそんなことをしたら、一生徐一族に狙われることになる。あの徐晃の息子だ、節度を守りきっちりと弔うだけの度量を持っている。魏帝もこれを邪魔することは無いだろう。